ペネトレーションしのべくん

さようなら、すべてのセキュリティエンジニア

『Fearless Change』を読んで、エンジニア的なモチベーションで社内営業に取り組めそうって話

はじめに

『Fearless Change アジャイルに効く アイデアを組織に広めるための48のパターン』の読書メモです。

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営業のスキルシート

私はエンジニアリングを仕事にしていることを結構気に入っています。エンジニアリングをやる理由としては邪道な気もしますが、何かを生み出すことよりも、何かが「できるようになった」ことが明確に分かるからです。エンジニアリングのスキルは「PythonAPI書いてました、インフラはAWSでEC2とRDS使ってウェブアプリ作るのに困らない程度には分かる、RDBの設計やチューニングのコアなところはからっきしです」みたいに、できること・経験があることをある程度明確に説明できて好きです。SES業界にはスキルシートなんてものもあるわけで。好きですね。

一方で、私は営業活動が苦手です。特に社内営業というやつはクソ喰らえだと思っています。そんなものがあるから、SlackのDMはいっこうになくならないし、タバコミュニケーション / 飲みニケーション的なものがまかり通っているのだと思います。

何よりクソ喰らえなのは、「何ができて、何ができないのか分からない」ことです。人とのコミュニケーションや、コミュニケーションを通じて自身の要求を通すスキルって、それができた・できなかった事実だけが残って、自分の何がその結果を生み出したかって分からなくないですか?ていうか、相手次第だったりするじゃないですか。ある結果を自分のスキルが(あるいはスキルのなさが)生み出したのか分かりません。エンジニアのスキルも時代と共に陳腐化しますが、営業力ってそれ以前の話だなと。細分化されてなくて、ただただ「営業力」っていう内部パラメータが実績のみで増減する感じ。LinkedInとかWantedlyで営業職の方のスキル一覧、見てみてくださいよ。「BtoB営業」「プレゼン」「Microsoft Office」「盛り上げ力」「一発芸」……なんじゃそりゃと。営業の皆さん、自分の出した結果が何によってもたらされたのか説明できますか?それって自分のスキルですか?どうですか?

そもそも「私、昔営業職やってました」って話から入るべきだったんですけど、そういうのが嫌でこの仕事を志したんですよ。そしたら結局、自分がやりたいことをやろうと思ったら、社内営業が必要なんですよ。どこまで行っても仕事は結局「人」、ようやく諦めがついたのが数年前です。

48の営業技

コミュニケーションで金を稼ぐことはついぞ叶わなかった私ですが、せめて技術で何かを解決するためのサブウエポンとしてのコミュ力・営業力というやつを身に付けるぐらいはしてもいいだろうという気持ちです。

ここでようやく『Fearless Change』です。同著は、新しいアイデアを如何に組織に浸透させるか?についてのハウツー本です。翻訳書特有のバタ臭いケーススタディには若干胃もたれしますが、そこに気を取られてはいけません。大事なのは「48のパターン」です。この本のいいところは、社内営業の手法を48のパターンとして個別に紹介してくれているところです。要は、あの「営業力」というよく分からん内部パラメータが、これを読むことで(少なくとも「社内営業力」に関しては)48のスキルの習熟度で構成されていると捉えられるようになるわけです。これには営業生まれSES育ち、嘘っぱちスキルシートはだいたい友達の私もにっこり。戦闘(社内営業)中、これまで「たたかう」という漠然としたコマンドしかなかったのが、同著を読み終えた瞬間から「とくぎ」が48個増えている安心感ったらない。

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『Fearless Change』を読むと、技が48個増える。なお、有利不利はもちろんあるし、熟練度は別途上げる必要あり。

好きな技

私が気に入っているのは「次のアクション(19)」「お試し期間(47)」です。同著を読む前からよく使ってたと思うので、それなりに熟練度が高いはずです。

できるようになりたいな、って技

同著内で「最小基本パック」と呼ばれている「エヴァンジェリスト(1)」「予備調査(4)」「ふりかえりの時間(5)」「小さな成功(2)」「ステップバイステップ(3)」はもちろん、「感謝を伝える(18)」「勢いの持続(41)」あたりもです。特に一度走り出した施策がダレちゃうみたいなことってよくあるんで、気をつけないといけません。あとは、「成功の匂い(40)」ですね。ようはちょっと前に言われていた「信頼貯金」ってやつです。タイプしているだけでも、怖気のする字面だ。

本当は嫌だけど、身につけないといけない技

ダントツで「みんなを巻き込む(33)」。というか、これをやるための他47の技だろって話なわけで。なんで(33)なんだ……?(1)か(48)だろって気もしますが。ちなみに(1)はエヴァンジェリスト(これは分かる)、(48)は「将軍の耳元でささやく」です。位置づけも含めて本当にクソな技だ。でも大事なことです。

あー……あとは「懐疑派代表(44)」「恐れは無用(46)」みたいな、反対派との付き合い方みたいなのも苦手ですね。根本的に「はい、お前らのせいでこの施策台無しでーすサヨウナラ!会社も辞めますこんな連中とはやってられないんで!!!」みたいな精神性なのでダメです。でもこれもスキルとして捉えられるようになって、だいぶ気が楽になりました。私は反対派に迎合するのではなく、スキルを駆使しているのだと。我ながらひねくれている。

おわりに

『Fearless Change』、社内営業がダルいなーと思ってる方にぜひ読んでみてほしいです。営業力とかいう漠然としたものを、スキルっぽく捉えられるようになりますよ。